2014年1月24日金曜日

南北戦争秘話〜続編

「黒い海の記憶」の著者山形孝夫が
アメリカに留学したのは、ちょうど
キング牧師の100万人大行進が
始まった年だった。

そして、黒人の教会で初めて
黒人の歌うゴスペルを聞く。

“ああ、あの列車がやって来る。
  ああ、あの音だ。
  屋根のない貨物列車だ。
  あの列車で母さんは運ばれていった。
  ああ、同じ列車がまたやって来る。
  今度は妹が運ばれていく。”

アフリカから根こそぎ、
アメリカに連れてこられ、
市場の競りにかけられ、
競り落とされる。

彼らの悲しい物語のすべてが
この詞のなかにある。

繰り返し歌ううちに、
会衆はみんな立ち上がり、
肩を揺すり、スクラムを組み、
ステップを踏む。

大きく広がる波のようなうねりとなって、
1時間、2時間と続く。
それが黒人教会の礼拝だったという。

ゴスペルに流れているのは
どうしようもない、深い「悲しみ」。
抵抗する術がなく、ただ嘆き悲しむだけ。
悲しみを深めていくしかない。

その深化の過程を「悲しみの知」と捉えると
「癒しの知」に通じると著者は言う。
ここから先は、著者の宗教観に入っていく。

本のタイトルの「黒い海の記憶」に戻る。

「黒い海の記憶」とは、
311のあの黒い海にさらわれ、
この世への未練や執着を残したまま
命を失った死者たちのことだ。
死者たちはなぜ死ななければならなかったのか。

人間には失うことでしか見いだせない
大切な何かがある。

311は近代国家の矛盾を明らかにした。
その中核に占める「原発安全神話」の
欺瞞を暴露した。

黒い海の記憶は、
被災地が近代日本の安全神話という呪縛から解放され、
自然との共生、人と人との命の絆の原点に立ち戻り、
世界に向かって立ち上がる、新しい未来の始まりと
著者は言う。



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